みかわち焼き

宝珠窯 ほうじゅがま

木原に皿山代官所がおかれた創生期の頃を初代とし、代々受け継がれて来た窯元です。 磁器を使った染付中心の割烹食器をメインに制作してきましたが、一方では染付に上絵付けを施した色彩豊かな商品を開発し、また柔らかさを基調とした文様の日用食器の制作にも挑戦しています。

染付の絵柄以外を黒い釉で吹き付ける黒吹釉など、従来にはなかったものを染付と組み合わることに積極的です。唐子、波うさぎや鳥獣戯画など伝統のモチーフを、構図や余白の取り方を洗練させ、柔らかな線と強弱のある濃淡の技で描くことで現代の器となりました。

住所
長崎県佐世保市木原町1861
TEL/FAX
0956-30-8763/0956-30-8432
展示・販売所
あり
カード支払
不可
取り扱い
三川内焼美術館、三川内焼オンライン・ショップ
代表的な技法
黒吹釉、染付

窯元「いま」語り

宝珠窯 当主 横石詠司 よこいし・えいじ

「つくる喜び」と「売れた喜び」

兄がいたので、家業を継ぐ予定はまったくありませんでした。東京の大学で経済を学び、人と話すのが好きだったので、将来は商社に勤めようと思っていました。しかし、兄の興味が磁器よりも陶器に移ってしまい、家業を継がず独立してしまったため、23歳のときに実家へ戻ることになりました。

それまではやきものに対してまったく興味がなかったので、家業を継いですぐの頃は、どういうことをすればいいのかまったくわかりません。生地のつくり方から鋳込み、窯の焚き方まですべてを自分で行い、仕事をしている中で技術を覚えていきました。

仕事をしているうちに、やきものの面白さがわかっていき、自分の中でハマっていくのがわかりました。私が家業を継いだのが1980年代。その頃の景気が良かったことも影響しています。最初の3、4年で私の手がけた商品に注目が集まって、売れ始めたからです。

自分がデザインをして、商品にまで仕立て上げる「つくる喜び」。それに対してお客さんからのいい反響が出たときの「売れた喜び」。この二つの喜びがあるからこそ、今まで辞めずに続けてこられたと思っています。

家業を継いだときは従業員が48名。扱っている商品はすべて割烹(かっぽう)食器でした。しかしバブル崩壊後は割烹食器だけでは成り立たず、日用食器も手がけることにシフトを転換しました。

シンプルだけれど存在感のあるうつわ

私にとって割烹食器は、とても魅力的な商品です。自分の想像力を働かせて、この部分はどのようにつくったら持ちやすいか、使いやすいか、ということを考えて、多様な形をつくることができるからです。また、割烹食器にはさまざまな釉薬を施し、そのうちのひとつに染付があり、上絵付けもあります。

また、日用食器の場合、扱う形状はほとんど同じです。だからといって、手がけるのは簡単ではありません。このうつわにどういう加飾をし、絵付をして、自分のカラーを出すか。こういったところに難しさと面白さがあります。

私のこだわりは、ひとつの商品に対して丹念に手を入れるということです。丹精込めた分だけ付加価値が出る。そんな絵付けを目指しています。

最近手がけているのは、白地に赤や青の点を入れたシンプルな豆皿。この皿はもともと割烹食器として扱っていた取り皿をアレンジしてつくりました。みかわち陶器市に試作として出してみたら、とても評判が良かったものです。周りは染付ばかりだったので、素朴なこの柄が目立ったのだと思います。

また、メダカを描いた豆皿も人気です。童謡「めだかの学校」をイメージして、1匹から10匹までのバリエーションを描いています。金魚鉢や庭の池をメダカが泳いでいる姿を見ているような気持ちになっていただけたらうれしいです。今後もこのような上品でシンプルだけれども、存在感のあるうつわを手がけていこうと思っています。

インタビュー:2020年10月25日

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