みかわち焼き

啓祥窯 けいしょうがま

三川内焼の始祖今村如猿(じょえん)を祖とし、代々御用窯の御細工所に出仕してきた窯です。その染付手描きを継承しつつ、磁器と陶器を組み合わせたうつわを完成しました。

藍一色の世界のなかで、迷いのない力強い骨描きや「浮かせ濃(だ)み」などの技術を駆使して、装飾品から日常の器までを幅広く制作しています。いきいきとした線で唐子の表情を描き分ける力量は圧巻です。草花、動物、抽象などの文様も華やかに描かれ、眺めて触れて楽しめるうつわたちです。

住所
長崎県佐世保市三川内町895
TEL/FAX
0956-30-8716/0956-30-8833
Mail
keisyo@athena.ocn.ne.jp
展示・販売所
あり(基本的に無休)
カード支払
取り扱い
三川内焼美術館、三川内焼オンライン・ショップ
代表的な技法
染付、唐子絵、桜尽くし絵、青海波文様

窯元「いま」語り

啓祥窯当主 今村盛也 いまむら・もりや

現代風の唐子の絵付

高校を卒業したときに、父はもうすでに60歳をすぎていました。遅く生まれた子だったので、今思うと家族は私が家業を継ぐのを待っていたようです。学校を出て、すぐに父に弟子入り。でも長年の苦労がたたったのか、その年の6月に父が倒れてしまい、18歳でいきなり一家の大黒柱になりました。

すべてが手探りだったので、技術を覚えたのは、見よう見まねです。師匠についたり訓練校で学んだりしたことはありません。すべて自分で仕事をする中で身につけました。その当時、うちの窯では絵付も造形も手がけていました。

転機だったのはガス窯の導入です。それまでは薪窯。それから石炭になって、重油になりました。当時は2ヶ月に3回、窯を入れないと経営的に苦しいという時代。ガス窯にしたら、1週間に1回ですぐに焼き上がり、やりやすくなりました。

さらにもうひとつの転機として、業務用食器から日用食器への転換です。平成の時代になってから、業務用食器の売り上げが落ちてきました。デザインは業務用と一般用であまり変わりはありません。そこで、業務用から一般の方でも使えるように、食器を改良していきました。

今、手がけているうつわの絵付は、植物と文様、そして唐子です。江戸時代の唐子をよく見ると、体型があまりにも細すぎたり、年寄りくさかったり。目や鼻がなくても子どもの顔に見せているのは、昔の技術のすごさだとは思いますが、あまり子どもらしく見えません。祖父が絵付をしているときによく観察していたのですが、自分が手がけるようになるとどうしてもその唐子の顔に違和感が出てきました。だから、もっとかわいらしい現代風の唐子の絵にしようと思って描いています。

三川内焼に対する3つのこだわり

三川内焼へのこだわりとしては、やはり少しでもいいから三川内焼らしさの片鱗を出さないと認められないという思いがあります。三川内焼らしさとは、手描きの部分です。

また、波佐見焼にしても有田焼にしても、描く職人さんの技術に大きな差はありません。その中でも、「濃(だ)み」の技法が、三川内焼の一番の特徴です。つまり、色をつける際に背景を塗り込める濃みの技法。この技法こそ他の産地よりも群を抜いて素晴らしいという思いがあります。他の産地は筆の穂を直接握って絞り出す「絞り濃み」の技法です。三川内焼は、筆を浮かせて軸は触らず、うつわをフリーハンドでコントロールする「ぼかし濃み」の技法を使っています。輪郭を描いた後に、面になっている部分を塗ったり、太い筆で描いたりするのではありません。描きつけるのではなく、染み込ませる。染付という名称だからこその技法です。

そして、もうひとつの特徴は「焼成」。三川内焼の窯元は焼成にとても神経を使っています。焼成時間が短いと、強度は弱くなってしまいます。薄くて軽くて硬い三川内焼にするためには、焼成する時間を通常よりも長くしなければいけません。また、酸素が少ない還元焼成を行うことで、発色を良します。手描き、ぼかしダミの技法、焼成。この3つのこだわりが、今後も三川内焼の良さを伝えるものだと思っています。

インタビュー:2020年10月25日

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